第4回「あなたの在り方は、すでにあなたの中に眠っている。」
序章|探さなくていい
在り方を探している、という人に会うことがある。
どんな作品を作ればいいのか。
自分らしさって、何なのか。
オリジナリティを出したいのに、出せない。
その言葉を聞くたびに、わたしは思う。
——探さなくていい。
あなたの在り方は、すでにあなたの中にある。
ただ、眠っているだけだ。
眠っているものは、外から持ってくることができない。
誰かに教わって手に入るものでも、ない。
では、どうすれば目覚めるのか。
それは—— 向き合うことを、始めた人だけが知っている。
第一章|在り方は、外にはない
テクニックを学んだ。 ツールを覚えた。 構図も、色も、整ってきた。
それでも——何かが違う。
その感覚に、覚えがないだろうか。
上手くなればなるほど、逆に気になり始めることがある。
他の人の作品と、どこか似ている。 スタイルは真似できた。
でも、自分である感覚が、薄い。
それは技術の問題ではない。
在り方が、まだ言葉になっていないだけだ。
在り方とは、外から持ってくるものではない。
誰かのスタイルを学んで手に入るものでもない。
すでにあなたの中にある。 ただ、まだ気づいていないだけだ。
第二章|あなたが何度も戻る場所
わたしには、何度も呼ばれた場所がある。
スリランカ。 ダラダマリガワ——仏歯寺。
気づけば5回、その場所に立っていた。
呼ばれるように、また行っていた。
自然農も、そうだ。
20年以上、無農薬・無肥料の畑に向き合ってきた。
誰かに頼まれたわけではない。
流行だったわけでもない。
ただ、そこに戻り続けた。
振り返ると、見えてくるものがある。
繰り返し戻る場所。 繰り返し浮かぶテーマ。 繰り返し感じる感情。
それは偶然ではない。
そこに、あなたの在り方が眠っている。
あなたが何度も戻る場所は、どこだろう。
何度も作りたくなるテーマは、何だろう。
答えを急がなくていい。 ただ、問いかけてみてほしい。
第三章|感動の記憶が、オリジナリティの根っこになる
何度も、決意した。
アーティストとして生きていく。
その言葉を、心の中で何度繰り返してきただろう。
ニューヨークの展覧会に公募した。
選ばれるかどうかより、「出す」という行為そのものが問いだった。
自分の作品は、世界に通じるのか。
自分が表現したいものは、本物なのか。 それとも、ただ綺麗にしたいだけなのか。
公募の締め切り前、何度も作品を見つめ直した。
技術的には問題ない。 構図も、色も、整っている。
でも——これは、自分の本心から生まれたものか。
その問いが、いつも最後に残った。
アーティストとして進もうとするとき、 人は必ず自分の本心と向き合う瞬間がくる。
それは一度向き合えば終わりではない。
展覧会のたびに。 新しい作品を生むたびに。 また問い直す。
「自分は本当に何を表現したいのか。」
この問いに、完了はない。
在り方とは、一度見つけて終わるものではない。
向き合い続けることで、少しずつ輪郭が見えてくる。
そしてその輪郭が、あなたにしか作れない作品の根っこになる。
第四章|向き合うことを、始める
向き合う、とはどういうことか。
どこかへ行くことではない。 何かを探しに出ることでもない。
今いる場所で、自分の内側に静かに目を向けること。 それだけだ。
では、何から始めるのか。
難しく考えなくていい。
自分が今まで作ってきた作品を、3枚並べてみる。
そして、問いかける。
「この作品を作ったとき、わたしは何を感じていたか。」
技術の話ではない。 構図の話でもない。
あの時の自分の内側に、何があったか。 それを、言葉にしてみる。
うまく言葉にならなくていい。
「なんとなく暗い気持ちだった」 「誰かに届けたかった」 「ただ美しいと思った」
それで十分だ。
その言葉の中に、あなたの在り方の断片がある。
繰り返し作ってきたテーマがあるなら、それを書き出す。
また戻ってくる感情があるなら、一言でメモする。
積み重ねていくと、 バラバラだと思っていたものが、 一本の線でつながる瞬間がくる。
これは、講座の中でいっしょにやることでもある。
過去の作品を言葉にする。 心の現在地を知る。 祈りをプロンプトに変える。
その入口として、まず自分の作品と静かに向き合う時間を持ってほしい。
在り方は、静かな場所にある。
騒がしい場所では聴こえない。 急いでいる時には見えない。
ただ、向き合おうとした人にだけ、少しずつ姿を現す。
結章|眠っているものは、すでにある
探さなくていい。
在り方は、遠くにあるものではない。
あなたが何度も戻ってきた場所に。
あなたが何度も問い直してきた問いの中に。 すでに、ある。
ただ、向き合うことを始めた人だけが、少しずつ見えてくる。
それは静かなプロセスだ。
完了することもない。
でも、始めた人と始めていない人では、 作品に宿るものが、確実に変わっていく。

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